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6月は主要中央銀行の会合が集中、金融政策の見通しが明確に
みなさん、こんにちは。
今月は8つの主要中央銀行が会合を開くため、金融政策の見通しがより明確になり、相場の方向性も明確になるのではないかと期待しています。
その中央銀行週間のスタートを控えた先週、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])が金利と通貨のスタンスを変更しているので、ご紹介します。
まず年初からのSNBの金融政策とスイスフランの動向を振り返ってみましょう。
昨年12月29日という年も押し迫った時に、ユーロ/スイスフランは0.9254フランという安値に到達。
これだけスイスフランが急騰(ユーロ/スイスフランは急落)したのは、毅然としてインフレと戦うSNB(スイス国立銀行)の存在がありました。しかし、このスイスフランの暴騰がスイスの輸出企業を苦しめることに。
インフレが幾分鎮静化したこともあり、SNBは突然、スイスフランに対するスタンスを通貨安へと変更しました。
スイスフランの動向はSNBが握っていますので、このSNBの変貌により、年初から突然スイスフランは下落開始。
ユーロ/スイスフランは0.9254フランの安値から5月27日の0.9930フランまで6カ月で676ポイント急騰しました。
あまり短期間にスイスフランが暴落すると、SNBが何らかのコメントをするのではないかという懸念もありましたが、マーケットはSNBの通貨安誘導スタンスを信じ、ユーロ/スイスフランはまずパリティ(=1.0000フランのこと)、そして1.2000フランへと続伸するというのがコンセンサスでした。
SNBがスイスフラン安への懸念を示し、スイスフラン/円は180円に向けた上昇トレンド入り
ところが、先週SNBは突然スイスフラン安に懸念を示しました。
スイス国立銀行(SNB)のトーマス・ジョーダン総裁は今週、高水準のインフレに対抗するため、外国為替売り介入の可能性を示唆した。 MUFG Bank Ltd.のリー・ハードマン氏など市場ストラテジストの見解では、スイスフランのさらなる弱体化は、中央銀行の利下げペースを鈍化させ、あるいは外貨売り介入を促す可能性がある。スイスの中央銀行が今回のサイクルで主要中央銀行として初めて利下げを実施したことを受け、スイスフランは今年第1四半期に大幅に下落した。 「このコメントは、SNBが今後のCHF(スイスフラン)の下落に対してより寛容でなくなることを明確に示している」とハードマン氏は述べた。
(出所:Bloomberg)
今年スイスフランはSNBの通貨安誘導に従って、主要通貨に対して大幅に下落。
ただスイスフランがあまり急速に劣化すると、SNBは利下げするのが難しくなります。
確かに確実視されていたSNBの6月20日の利下げの織り込みも43%まで低下しています。
結果、SNBは利下げを行うために、急激なスイスフラン安は認めないという方針に切り替えた模様。
これはかなり重要です。
SNBがスイスフラン安に誘導していた年初から先週までの局面では、当然主要通貨に対してスイスフランは急落しています。
ところがそのスイスフランより弱含んでいた通貨があります。
それは日本円。
SNBが通貨安誘導しているにもかかわらず、日本円はそれより弱いということになります。
そして先週SNBがスイスフラン安に対して警告を出したということは、スイスフラン/円は再び上昇するということになります。
実際スイスフラン/円は、5日に175.14円と高値を更新しています。
SNBは他の中央銀行と比較しても財務の安定性、独立性などで評価が高い中央銀行であり、基本的にスイスフランはロング(買い)にしたい通貨の筆頭。
ただ先週までは、SNBが通貨安誘導していたため、手が出ませんでしたが、先週SNBがそのスタンスを変えたため、ユーロ/スイスフランは反落、スイスフラン/円は再び上昇トレンドに戻ると考えています。
カナダ中銀がG7の先陣を切って利下げ開始、他の中央銀行は追随できるか?
前述したように今月は主要中央銀行が金融政策決定会合を開催します。
まず4日、カナダ中銀がG7の先陣を切って政策金利を0.25ポイント利下げしました(政策金利は4.75%へ)
カナダ中銀、政策金利を4.75%に下げ-追加利下げも示唆
(出所:Bloomberg)
マーケットでは利下げされることが広く予想されており、カナダドルは月初から売り込まれていたので、発表後のカナダドルへの影響は限定的。
ただカナダ中銀の9月の利下げもほぼ100%予想されています。
加えて12月の追加利下げも織り込まれており、政策金利は4.25%へと下げられる予定。
この連続利下げを織り込む形で、月初からカナダドルは軟調に推移しており、注目されています。
そしてカナダ中銀の連続利下げの予測から連想されるのは、やはりお隣の米国の利下げ。
年内の米国の利下げは難しくなったという意見も増えてきていましたが、本稿執筆時点での金利先物市場では、年内米国では2回弱の利下げが織り込まれています。
そして本日のECB(欧州中央銀行)理事会でも0.25%の利下げがほぼ100%織り込まれています。
0.25%の利下げが行われた後、明確かつ一貫したガイダンスが発表される予定です。
株高の一方で通貨は? 米ドル/円は中期では再び160円を伺う動きに
このように主要中銀で広範に利下げが予想されている環境下では、株は強い。
4日のS&P500は今年に入ってなんと25回目の最高値を更新しました。
注目のエヌビディアを中心に大型ハイテク銘柄に買いが集まった展開となっています。
今週火曜日はインド株の暴落で、急速にリスクオフに傾斜したマーケットでしたが、水曜日のNYマーケットでは、米株が反発。
日経平均先物も何事もなかったかのように、3万8960円に反発してNY市場はクローズしました。
火曜日のリスクオフはなんだったのかという展開です。
このように多くの中央銀行の利下げが予想されている中で、株は底堅い。では、通貨はどうか?
年内のFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げが織り込まれつつあり、日本銀行の金融政策の正常化も報道される中、金融政策の相違から考えれば、米ドル/円は下落するはず。
ただ、米ドル/円はなかなかそうなりません。
それは過去数年間、マーケットが学んできたように、デジタル赤字や新NISAによる個人の外株買いなどが大きく影響しており、米ドル/円は日米金利差が縮小するだけではなかなか円高にはならないのです。
実際、5日の東京市場では、NISA関連の外株買いも断続的にでていた模様。
結果、米ドル/円は依然として152~157円のレンジでの推移。中期では再び160円を伺う動き。
一方、スイスフラン/円は180円に向けて上昇トレンドに入ったと考えています。
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